絵にならないかも知れないふたりだけれど・・・ | もぐらと星の物語

絵にならないかも知れないふたりだけれど・・・

 

40歳の男と38歳の女が 東京の とあるターミナル駅の改札の前で

その一日が あともうすこしで 終わるというのに

つないだ手を 離せずにいる。

 

切符を買う ひとときも 惜しむかのように 手をつないでいる。

 

「手を 離せば いいんじゃない?」

 

片手で お財布の中から 取り出しずらそうに小銭を探している僕に きみは 言うけれど

きみのほうも 笑って 手を引いたりはしない。

 

電光掲示板で 僕が乗る電車の時刻を確認したあとも

次に会う予定を だらだらと話す。

 

「もう あの電車には 座れないよ(笑)」

 

「この間 寝過ごしたから 座っちゃダメ~」

 

でも きみの電車の時間も 心配になって やっと 未練深げに手を離す。

 

「じゃあね 気をつけて 帰ってね」

 

「バイバイ」

 

改札を抜けて 振り返ると 

まだ きみは 同じ所に立っていて 小さく手を振る。

僕も 肩ぐらいまで手を上げて 小さく応える。

 

二度目に振り返った時も きみは 手を振ってくれた。

 

恥かしいな と思いながら また 振り向いた時

僕の目は 遠くのほうで それでも 白いきみのシャツを見つけた。