影絵 | もぐらと星の物語

影絵

渋滞の中 

疲れている僕を気遣って きみが おしゃべりになる

でも うまく返事ができない僕

  

結構 遠くまで きちゃったものね

  

遊び疲れて 眠ってしまったのを 申し訳なさそうに

きみが 言葉を つづける

それも 停まっている時間の長さに 静かになる

  

前には 大きなトラックの壁

後ろの トラックは ライトを消さない

  

突然 

きみが 手を 動かした

「これが うさぎ・・・」

「ぴょん ぴょん    ほら 肩の上に 乗るよ」

「今度は きつね・・・          あなたも なにか 作って・・・」

  


前のトラックに写る影  

僕を 退屈させないように こんなことを思いつく きみに 驚き

影絵をする きみを 愛しく 感じる

  

「じゃあ これは わしだ!

うさぎちゃんを 捕まえに ゆくよっ 」

手のひらを はばたかせ ゆっくり 助手席に " うさぎ "  を 追い詰める

逃げる うさぎ を 追いかけて

僕は きみの 頬に キスをする

  

「ばかぁ~ うしろから 見えちゃうじゃない・・・」

  

でも きみの 思惑どおり

僕の 意識は はっきりと 冴えた

  

  

今度 夜の倉庫街で

ふたりだけの 影絵をしよう

車のライトを照らして 大きな影を つくろう

手をつないだり

走ったり

キス したり

 

動物の 影 なんか つくらない

  

ふたりの 恋人と 影を いっぱい つくろうね